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「恵麻」
「何?」
「愛してる」
今まで、誰にも言われたことのない台詞。
好きよりももっと大切な、たった一人の人に向けられるかけがえのない一言。
「愛してるよ、恵麻」
「…っ」
誰かの特別になんて、なりたくないって思ってた。いつか壊れて傷付くなら、他愛ない関係でいた方が楽だって。
「…善一さん」
「恵麻?どうした?」
涙を零した私を見て、善一さんは体を起こす。心配そうなその表情に、私はまた胸の奥が温かくなるのを感じた。
「ありがとう」
「ありがとう?」
「私を、見つけてくれて」
私も体を起こして泣きながら微笑むと、善一さんは一瞬驚いた顔をして私をグッと引き寄せて。
「それは、俺の台詞だ」
なんて、少しだけ震える声で呟いた。
「ふふっ、善一さんがこんなに甘い人だなんて思わなかった」
「恵麻が可愛いから、甘やかしたくなる」
「じゃあ、ずーっと可愛くいなきゃ」
「恵麻は可愛いよ、ずっと」
今度は善一さんが、私の頬にキスをした。
これから先、何が起こるか誰にも分からない。
だけど善一さんはきっと、ずっと私を好きでいてくれる。今、そんな風に思えてるならそれで十分だ。
私の他愛ない一言から始まった、彼の愛は。
私を優しく包んでくれる最高に幸せな宝物です。
ーー完ーー
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