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そうこうしているうちに、店長が言ってたビルに着いた。外に看板は1つも出ていなくて、オフィスが入っていそうな地味な建物だ。
小さなエレベーターで三階まで上がると、すぐ目の前に木製の観音開きのドアがあった。その上には金色のネオンで店名が慎ましく光っている。開店前だったし、正面から入ってきていいって聞いていたからドアを開けた。
中は黒塗りの壁が落ち着いた雰囲気を醸し出している。でも木目の入ったカウンターや椅子や机、暖色の照明がホッと心を和らげる。
店の奥にはグランドピアノが鎮座していた。ツヤを消した壁を背に、星の粒を乗っけたみたいにキラキラと輝いている。
こういうところなら1人でふらっと来れそうだなと思った。
「あれ?2人だったっけ」
カウンターの奥から白髪混じりの髪をオールバックにしたオッさんがでてきた。
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