53人が本棚に入れています
本棚に追加
「私、その、歌手を目指してて、人前で歌う機会があればと思いまして、だから、ボランティアでもいいので、歌わせていただけませんか」
後藤はニコニコしながら「いいですよー」とあっさり言った。
アリサはありがとうございます!と勢いよく頭を下げた。
「じゃついでだから、2人いっぺんに面接しちゃいましょう」
後藤はピアノを指差した。
「曲は?」
俺はモッズコートを脱いでピアノの前に座った。
「何でもいいですよ」
「ちょっと触っていいですか。曲とは関係なしに」
「どうぞ」
ニスに木目が透けた鍵盤を触って、指が沈み込む時の硬さを確認する。
最初のコメントを投稿しよう!