命尽きる日

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  ── そして。  アバールが一角王。ケリャ・メ・アバールは、息を引き取った。  次代を担う第一子、アーリャ・メ・アバールに譲位してから四百十五年後の、月夜が美しい夜更けだった。アーリャ王、エル王妃、エレナ姫の三名を側へ呼びつけ「後を頼む」と告げた後、静かにその生涯を閉じたという。  その遺骨は特例として、他でもないアーリャ王の采配により、彼が生前ただ一人愛しつくしたジャノル王妃の隣へと埋葬された。 「我自身、母の記憶が薄らぐほど長い時間。父はたった一人だった。でも決して、それが不幸だったとは、私は思わない」  アーリャ王はそう言った。  この後、ケリャ王とジャノル王妃の物語は、長命の者、短命の者が互いを愛するときの心構えとして、長く語り継がれることとなる。 「死は旅路である。恐れるものではない。私たちは今日とて、生、という、痛みと悲しみと、そして多くの喜びを共にした、畏れ多き旅路を歩んでいるのだから」  後年、つがいであるエル王妃を隣に、アーリャ王はそう語ったという。  二人の愛の結論として、自身の誇りに、胸を張りながら。 おわり
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