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明と同じように、「よう、お疲れ」と対応する矢島の横で、明は緊張している自分に気が付いた。
「あれ?そういえば、昼休みに菊川君を部室で見るのって久しぶりな気がする」
「今まで図書館とかに行って課題をやったりしてたからな。今日
はたまたま時間があったから顔を出してみた」
嫌な動悸を感じていたが、それを隠し平静を装って答える。
「笹峰は結構部室に顔出してるのか?」
不意に気になって尋ねてみた。記憶にある限りでは、夏ごろまで、つまり明が妙な後ろめたさを覚えるまではお互いに昼休みは
ほぼ毎日部室で顔を合わせていたように思う。あとから思えば間抜けな聞き返しだったかもしれない。気になったのは事実だが、間の抜けた聞き返ししかできないほど、頭も回っていなかった。
「大体昼休みには部室に来てるかな。でも、急に菊川君を見なく
なって、それがちょっと続いてたから、逆に部室で見るのが久々
で驚いたよ」
「ん? そんなに俺、部室に来てなかったっけ」
遥の言葉に、明は少し驚いた。確かに部室に顔を出す頻度を下げはしたが、かといって、ほとんど来ていない、という程でもなかったはずだが。
「うーん、それもあると思うけど、いつも部室で見かけていたのに、急にいなくなったから不自然に思えたっていうのもあるかなあ」
「そう言えばそうだな。週に二、三回しか顔を出さない俺が言えた義理でもないけど、菊川の姿が見なくなったときは何かあったのかって思ったな。今はいないことに慣れたけど」
確かに今まで顔を合わせていた人物がふっといなくなったら一
瞬何が起こったのかとは思うだろう。とはいえ、遥とはいくつか
授業が同じで、教室で顔を合わせることはあるし、昨日のように、天文部の活動について召集がかかればそちらにも赴いているから、心配を掛けた、ということはなさそうだ。
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