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「ああ、三船山の最寄駅に商店街あるだろ。そこに、新しく天体関係の店ができたらしくて、もしよかったら一緒にどうかと思ってさ。どうかな?」
「ああ! そう言えばまだ行ったことなくて、行きたいなと思ってたんだ」
「じゃあ、決まりだな。とりあえず、駅前の噴水広場で待ち合わせるのでいいか。商店街に入ってちょっと歩いたところにあるんだ。まだ、ネットの地図でしか見たことないから、詳しくは何とも言えないけど」
「まあまあ、それは行ってみてのお楽しみっていうことで期待しとく」
「う、そう言われるとハードル高いな……。とりあえず、行ってよう。品揃えは、かなり良さそうだし。ただ、その代わり値段がなあ。正直言って優しくない」
「あはは、それは仕方ないよ。でも、すごく面白そうだなあ」
「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ、日曜日に早速行って
みるか」
ここ最近で、一番自然に会話をかわせたことに内心ほっとしつつ、明はこれからだと気持ちを新たにした。
◇
新しくできた天体の店へ遥とでかけることを約束し、それから二日経った土曜日の晩。明は不思議な夢を見ていた。
――竪琴、それも並大抵じゃない音色。
一人の青年が竪琴を奏でている。その音色に、妖精が集まっている。妖精?
――確か、あの妖精って、昔読んだ神話の挿絵で見た奴じゃないか。
竪琴、妖精とくれば連想できるものは一つしかない、こと座の神話だ。しかし、夢の内容は神話よりも展開が急であった。近づこうとした妖精――恐らくは、竪琴を弾いている青年の妻となるエウルディケが、突如近くの草むらから飛び出した毒蛇にかまれ、もだえ苦しんでいる。青年――オルフェウスが、その毒蛇を追い払うもエウルディケは息を引き取った。そこから場面が急転換し、気が付けばそこは間違いなく地獄だった。そして、明の目の前には地獄の番犬、ケルベロスが牙をむいていた。その牙が、明めがけて迫ってくる――!
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