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「冬休みといえば、年内最後の観測計画、何か小山先輩から聞かれてますか?」
「いや、まだだな。そもそも今日集まるのも、その話のためだしな」
小山先輩というのは、小山玲奈。天文部の部長を務めている先輩だ。正直なところ、明はこの先輩に対して少し苦手意識を持っていた。表情が分かりにくく、第一印象でとっつきづらいと感じたのだ。去年一年間の活動で、話してみると面白く、よく毒を吐くものの当初の印象は大分薄らいでいた。それでも岡谷と比べると、積極的に関わろうとしてないことは確かだ。
「あら早い」
噂をすれば。見慣れた無表情とともに入ってきたのは小山だった。
「二人だけ?」
「ああ。そのうち他の奴らも来るだろう。ところで、今回はどの星座を見るんだ?」
「それを今言ったら意味ないから。とりあえず、集まるまで待ちましょう」
そういって、小山は机を挟んで、明と岡谷の対面に座り、鞄から小説を取り出すと黙々とそれを読み始める。
「しかし、今の時期ベストタイミングで観測できる星座はあまりないんじゃないか? 大体が夜明けとかとんでもない時間に南中するものばかりのはずだ」
「もちろんそうだけど、年内最後にせっかくだから何か観測して冬休みに入りたいって思っただけよ」
「なるほど。まあ、確かに何も観測できないわけじゃなく、実際のところは、東の空低くにあったりするというだけだもんな」
「この時期っていうと、オリオン座とかですか?」
「あら鋭い」
読んでいた小説を閉じて、小山はあっさりと明の言葉を肯定する。
「全員が集まるまで、言わないんじゃなかったのか」
「別に隠すとは言ってないじゃない。言い当てられたからその通りって返しただけよ」
「まあ、それもそうか。しかし、そうか、オリオン座か」
「年内最後には、ぴったりじゃない?」
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