Lyra

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 思えば、遥には大分助けられてきた。 ――きっと俺が惹かれたのは、そこなんだ。  一緒にいるのが楽しくて。それは、さりげない遥の気配りや助けがあってのことだったのだろう。いつの間にか、彼女といることが心地よくなり、もっと一緒にいたいと思うようになった。その思いが、きっと自分でも気づかないうちに、もっと大きな想いへと変わっていっていたのだろう。  ともかく、どうしたものかと悩みかけていると、スマホがメッセージの着信を知らせた。相手は、小山だった。明日の昼休み、もしくは放課後暇ならば話したいことがあるので会うことが出来るかという内容だった。 ――そうだ、小山先輩ならば……。  一人で考えていても答えが出るはずはない。なぜ気づかないのか。とにかく、渡りに船とばかりに二つ返事で了承し、放課後に部室で会う約束を取り付けた。  苦手意識は確かにあるが、今はそんなことを気にしてはいられない。天文部で、明以外に遥が話しかけているのは小山だ。そんな小山であれば、もしかしたら遥について何か知っているかもしれない。それに、小山の方からそのような話をこのタイミングで持ちかけてくる、ということも気になった。恐らくは、今日の事であろうと明の勘は告げていた。  翌日。授業を全て終えた明は、部室に急いでいた。 「すみません、遅くなりました」  扉の前で息を整えるのもそこそこに、明は部室へ足を踏み入れる。それに気づいた小山は読んでいた小説を鞄にしまい、自分の対面に座るよう明を促した。 「どう話を切り出そうか迷ってたんだけど」  明が座ると、そう前置きして小山は、ふぅ、とため息をついてから言葉を続ける。 「回りくどいのは苦手だから、単刀直入に聞かせてもらうよ。昨日、遥ちゃんと何があったの?」  どうやら、昨日明と出かける事も遥は小山に話していたようだ。だとすれば、あの時態度が変わったのは間違いなく自分のせいだ。そう確信し、明は昨日あったことをそのまま話した。自分の悩みを相談すると、遥の様子が変わったことも。そして、それをどうにかしたいということも。
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