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「なるほどね。日曜日に出かけるっていうことは聞いてたんだけ
ど、その後連絡を受けて、何かあったのか気になったのよ」
「俺が回りくどく悩みを相談したせいでしょうか」
「さあ、それは本人に聞いてみなきゃわかんないんじゃない。それで、菊川君の悩みの、何ていうの?対象というのか、相手は遥ちゃんなんだよね?」
「そうです」
迷いのない明の返答に、そうか、とつぶやくと小山は少しだけ安心したような表情を見せた。しかし、すぐにそれを掻き消し、もとの無表情に戻る。
「それを聞けて、一番安心したよ。矢島君から菊川君が悩んでいる、っていうのは聞いてたんだけどね。でも、誰に対して悩んでるのか、っていうのは聞いてなかったから」
「最初に相談したのが矢島先輩でしたが、それについては話しませんでしたからね。実は、笹峰と一度話し合ってみたら、と提案してくれたのも矢島先輩だったんです」
「なるほどね。とにかく、今君から遥ちゃんに声を掛けようとしても避けられるだけだと思うから、私の方から伝えとくよ。しかし、何というか、案外君も不器用だね」
しれっと最後に切られてしまい、明は苦笑するしかなかった。
「しかし、それにしても不思議なんですが、なぜ俺が相談した悩みで、笹峰があんなに落ち込んだのかが分からないんですよね」
「本当に鈍いね」
今度は呆れたように返されてしまった。
「俺に原因がある、ということは分かってますよ?」
「そうじゃなくて。まぁ、気が付かないならそれでもいいけど」
ため息をつきながら、小山は「それも仕方ないか」と呟いた。なおも不思議そうな顔をする明に、小山は何でもない、と鞄にしまった小説を取り出した。
「とにかく、わけは分かったから。君が遥ちゃんのために何かしたいっていうのもよくわかった。けど、今は何もしない方がいい。きちんと私から話しておくから、それで納得してくれるかな」
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