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やおら遥の声がして、明と岡谷は「お疲れ」と彼女を迎えた。
「星座の話してたの?」
「ああ。オリオン座についてとかさ」
「といっても、知ってるような話しかないんだがな」
実際、オリオン座はメジャーな話が多いため、それほど知られていないような逸話は存在しない。
「シリウスといえば、大体わかりますよね」
「でも、意外とプロキオンについては知られてなかったり」
「ああ。ところで、そう言う二人はプロキオンの意味は知っているかな?」
「大犬の前にいる子犬、だったと思います」
「もともとおおいぬ座は存在していたから、それでたまたま子犬の神話があって、ちょうどシリウスの前にそれほど明るくなく、かといって暗すぎもしない星があったからそれをプロキオンにしたんですよね?」
岡谷の問いに明が打てば響くように答え、遥は神話の補足をする。
「よく知っていたな。そう、シリウスとプロキオンはそれぞれおおいぬ座、こいぬ座だが、二つの星座の間に特に関係はないんだ。よく勘違いされるがな」
少し驚いたように岡谷が言った。それもそうだが、明はようやく遥と何のしがらみもなく話せたことが嬉しかった。
もちろん、自分の中に秘めた決意を忘れたわけではない。それでも、鬱々とした気分を払拭したせいか、今の明はここ最近なかったほど活き活きとしていた。
「岡谷君、矢島君から連絡来てない? そろそろ集合時間なのに連絡がなくて、もしかしたらそっちにいってるかもしれないから確認お願い」
「あいつ、全く。ちょっと待てよ」
そういって携帯を開く。が、どうやら連絡はなかったらしく、岡谷は首を横に振った。
「来てないな。まあ、いつものことだろ、あいつの遅刻は」
この一年で矢島が時間通りに来たのは四月から数えて八回中一回であった。
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