Lyra

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「おーい!」  と思ったら、背後から大声が聞こえた。 「矢島だな。何とか時間通りだ」 「みたいね」  そういっている間に、矢島も到着した。どうやら走って来たのか、息切れをしている。 「すまん、電車に乗り遅れてな。なんとか間に合ったか」  そういって、はあーっ、と大きく息をついた。そんな矢島にひとつ頷き、小山は無情な号令をかける。 「それじゃ、全員揃ったし、観測場所に移動しましょうか」 「ちょ、ちょっと待ってくれ、休む間もなしか!」 「時間通りだからね。あるかなしかなら、無しとだけ言っとくわ」  矢島の抗議にいつものドライな口調で切り返して小山はさっさと登山口へ向かう。 「じゃ、俺もこいつを持っていかないといけないからな」  小山に続いて岡谷も、望遠鏡を小脇に抱え、台座を肩に担いで登山口へと入っていった。 「先輩、無理はしないでください。いつもの場所ですから、後からでも大丈夫だと思います」 「遅れる事、先輩に伝えておきますから」 「すまん、俺はもう少しかかる。よろしく伝えてくれ、悪いな」  矢島に声を掛けると、明と遥も先に入っていった二人の後を追った。と、言っても今までいつも来ていた場所だからそれほど困りはしない。  この三船山は、標高もそれなりにあるため、山頂まで登るとなると流石に厳しいが、ちょうど中腹地点に開けた場所がある。定期的に山の保全のために手入れもされており、またその周辺だけは木々が避けていて、観測するにも邪魔になる遮蔽物がない。武士たちが斬り合いをしたその場所であるとも言われている。明と遥が着くと、岡谷が望遠鏡のセッティングをしている最中だった。
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