Lyra

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「あのさ、笹峰」 「ん?」  星空を見上げていた遥がこちらを向く。 ――大丈夫。 「俺は、笹峰が」  言葉にするのは一瞬なのに。 「好きだよ」  ただ、その一言を出すのには、とてつもない時間がかかる。 「あ、あれ。笹峰?」  無意識に目を閉じてしまっていた。全く反応がないので、恐る恐る目を開けて尋ねると、遥は呆けていた。明の声に反応して、ようやくこちらに意識が戻ってくる。 「あ、ご、ごめん。まさか菊川君からそんなこと言われるって思わなくて……」 「小山先輩から、何も聞いてないのか?」 「うん。大丈夫だよ、って励まされはしたんだけど。でも、菊川君には、もう他に好きな人いるんだろうなって思ってたから、驚いてさ」  とにかく、答えなきゃね、と言うと遥はすぅ、と息を吸い、明の目を見つめて、頬に赤みを残しながらもはっきりと答えた。 「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。私も、菊川君のことが、好きです」  だから、と言って遥は手を差し出した。 「これからも、よろしく」  遥の言葉に一瞬嬉しさのあまり、呆然となっていた明だが、はっとして慌てて差し出された手を握り返した。 「こ、こちらこそ。よろしくな」  そんな明を、微笑みながら遥は見つめていた。そして、その二人の頭上に、オリオン座を形作る星々が躍るように輝いていた。
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