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「そういえばさ」
あの後、戻ってきた先輩方にひとしきりいじられながらも祝福され、本来の部としての目的であった天体観測も終えての帰り道。ふと思い出した、というように遥が尋ねてきた。
「菊川君は、なんで私に告白しようって思ったの?」
その問いに、明は遥の方に顔を向けて、しっかりと答えた。
「一緒にいたいと思ったのが一つ。それと、色々と助けられているうちに惹かれていった、っていうのが理由かな。ほら、前に天文関係のお店に行ったあとに悩んでるんじゃないかって声かけてくれただろ? 別にあれに始まったことじゃないけど、さ」
後ろ髪を掻きながら明ははにかんで言った。
「あと、凄いなって思ったこと、っていうのもあるかな」
「えっ、何が?」
思いもよらぬ明の一言に文字通り、目を丸くして遥は聞き返した。
「いや、天文について笹峰がものすごく勉強したり、調べたりしてたの、知ってたからさ」
「み、見てたの?」
「うん。何度か図書館で見かけたんだけど、笹峰ときたら必死で本探してたから声掛けられなくてさ。でも、俺もそれを見てたら負けられないな、って励みになってたんだ」
「うわぁ……。恥ずかしいよ」
よほど見られていたことが恥ずかしかったのか、遥は両手で顔を覆ってしまった。そんな遥の様子に、明もますます照れくさくなり、話題を変えようとする。
「でも、それで言うなら、笹峰こそ何で俺なんかを?」
さっき告白したとき、遥は明に想い人がいるのではないか、ということを気にしていた。それに、天文関係の店に行ったときも、思えば遥の様子がおかしくなったのは明が想いを寄せる人物がいる、と判明してからだった。
――と、いうかその時点で気が付けない俺も俺だけど。
「あ、えっと……」
少しだけ躊躇いながら、遥は口を開いた。
「天体の話をしてる菊川君を見てたら、最初は凄いなとしか思わなかったんだけど、だんだん喋ってるときの菊川君の様子に惹かれていってさ。それが理由かな、私は。凄く活き活きしてるから見てるうちに人柄とかも分かってきて、それで好きになったってところ」
だから菊川君と少し似てるね、と照れくさそうに笑いながら遥は言い、一方の明はというと、顔を真っ赤にして、今度は物も言えない状態だった。
「ま、まさかそこまで見られてるとは思わなかった……」
ようやく消え入るような小さな声で呟き、その一言に遥は笑った。
「まあ、でも。そっか。ありがとう。は、遥」
そっぽを向いて耳のあたりを赤らめながらも、自分の名前で呼んでくれた明に驚きの表情を浮かべていた遥だったが、すぐににっこりと笑って返した。
「どういたしまして、明」
そうしてそのまま、肩を寄せ合うようにして二人は帰路へと着いていった。
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