Lyra

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「そうね。実は後の二人が来る間に少し話したんだけど、オリオン座を観測しようと思います」 「オリオン座、か。有名どころで、明るいのを持ってきたな」 「そう、矢島君の言うとおり、年内最後だから有名で、結構明るい星座を、ということで選んでみたよ。それと、観測する時間的にも無理がないのをね」 「で、観測する日はいつですか?」 「今の予定では十二月の第三週土曜日。授業日数も、残り少なくなるから無理がないと思うけど、どう? 今の段階で日程が厳しいっていう人いる?」  明の質問に答えながら小山は話を進めていく。提示された日にちも、明は問題ない。それは、他のメンバーも同じようだった。 その様子に頷きながら、小山はじゃあ、と話をまとめた。 「とりあえず今のところ全員参加ね。観測する場所はいつも通り、三船山。夜七時に集合して、恐らく八時には東の空に見えるはずだから大体一時間くらいは観測できると思う。観測について、何か質問ある?」 「望遠鏡を持っていく当番だが、今回は誰だったっけ?」  矢島が尋ねると、岡谷がそれに答えた。 「今回は俺だ。矢島は、年明け最初の観測のときに当番だな」 「そうか、一周したんだったな。了解」 「他には?」  特に何もなさそうだったので、小山は「じゃあ、解散」と言い、再び小説の世界に戻った。岡谷は、次の授業があるらしく、部室を出ていき、明、遥、矢島、小山が残った。 「矢島先輩は、そういえば役職とかに就いてないんでしたよね」 「ん、どうした急に?」 「あ、いや、来年僕たちに幹部が回って来たときどうなるのかな、って何となく気になったんです」  半分は本当だった。しかし、それと同時に遥といるときの気まずさを、少しでも他に向けて紛らわしたいという気持ちもあった。 「そうなのか。まあ、俺は役職に就きたくなかった、っていうのもあるんだ。何というかな。一部員として、諸々の仕事を抱えながら活動するのは、ちょっと不器用な俺には向いてないと思ってな。小山や岡谷にも、その辺は説明して、それで今の形になったってところだな。どちらかというと、俺は自由に活動していたかったんだよ」
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