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そう言って、矢島はちらりと遥の方を見て、明に視線を戻した。
「そういや、菊川の代は笹峰とお前だけだったな。そして、新入生を入れないと、この部自体が存続の危機なんだよな」
「ええ。正直、今から考えても頭が痛いですよ。何より、今年も一年生は入ってくれませんでしたからね」
「まあ、そう気負うなって。小山や岡谷を頼れば問題はないはずさ」
「ちょっと、矢島君。なに一人だけ蚊帳の外に出ようとしてるの」
「おっと、聞こえていたか……」
しれっと自分を頭数から外したことを小山にたしなめられ、矢島は肩をすくめた。
「でも、本当に今のままだと厳しいんだよね」
横から遥が会話に加わる。
「まあ、地味な部活だからなぁ。それに、今年は宣伝に力を入れなかったからな」
「人手を増やさないと、宣伝活動すらままならない、って思い知らされましたよね」
去年は、矢島達より更に一つ上の先輩方が一番人数の多い代であったため、宣伝活動もそれなりのものが出来ていたが、その代が卒業していなくなった結果、今年の勧誘活動は実際に初回の観測に来て天文部を実感してもらうという、なんとも荒っぽいものになってしまった。
「やっぱり、人手がないと準備とかに時間がかかるものはできないもんね」
「だよなー」
「そう言っても、お前らだって二人だけだからなぁ。あ、いや、あれは結局皆退部していったのか」
明たちの代も、最初は十人を超えていたのだが、夜間の活動がメインとなる天文部についていくことができず、一人、また一人と退部していった。また、当然ながら友達同士で連れ添って入部したという部員もいたため、ひどいときには一気に五人くらいが退部申請をしにきたこともあった。
「まったく、あの退部ラッシュには肝を冷やしたもんだ。誰も残らないんじゃないかって、小山とかは平気な顔して毒を吐くし」
「毒を吐いたんじゃなくて、本当にいなくなるかもねって言っただけじゃない」
相変わらず小説からは顔を上げないまま、小山が矢島にツッコミを入れる。
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