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「でも、私もまさか二人だけになるなんて思わなかったなあ」
「うん」
「まあ、そういうわけだからまずはこの部を知ってもらわないとな。活動に参加できなくても部にいることはできるってことからアピールするとか」
「それじゃ天文部にいる意味ないから。活動には参加することが望ましい、しかし強制ではないっていうだけだからね」
「確かに小山の言うとおりだし、俺たちも強制はしてないんだがなぁ。しかし、そうなると本当に何をアピールしたものやら」
遥に話しかけられたものの、上手く答えられず、次の言葉を明が探している間に小山と矢島の間で話が進んでおり、会話に入るタイミングを逸した明はそっと席を立って部室を出ることにした。
――我ながら情けない。
適当に緑茶を買い、冷たいペットボトルを額に当てる。またしても、逃げ出してしまった。さっき部室を後にしたのは、二人の先輩が喋っている横で、遥と顔を合わせるのがどうしてもいたたまれなかったからだ。それと、ここ数日で気が付いたことがある。
――何で俺は笹峰が部室に来るのを期待してるんだ。
先ほどもそうだった。遥が来ると居づらさを感じるくせに、それとは裏腹にどこかで彼女が来るのを心待ちにしている自分がいるのだ。そして、彼女が入ってきたときに一瞬胸が高鳴ったのを生々しく覚えている。それが、遥と会うたびに後ろめたさを覚える理由の一つとなっていることも自覚している。
「馬鹿らしい」
「何が馬鹿らしいの?」
不意に声を掛けられ、びっくりして振り返ると背後に遥が立っていた。どうやら、後を追いかけてきたのか。
「部室にいたんじゃないの?」
「急に菊川君が物も言わずに荷物だけおいて部屋を出ていくから、どうしたんだろうって思って。急にごめん」
「いや、こっちこそごめん。ちょっと飲み物を買いに行くくらいだし、皆話に夢中だったみたいで、声を掛けるのも悪いかなって思ったんだ」
「実際盛り上がってたからね。あ、緑茶買ったんだ?」
「ああ。カフェオレもいいかなと思ったんだけどな」
「カフェオレかー。喉渇いてると、きついときあるよね」
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