最終.白雪姫

17/21
前へ
/165ページ
次へ
「え……?」 タックルされた王子様は未だに状況が掴めていないらしい。 『実は魔女には、誰にも言えないもう一つ欲望がありました。』 ナレーションが変わる。 この声は優芽だ。 ちなみに先ほど照明を落としたのはマッキーである。 そう……私は、事前にこの二人に全てを打ち明けていたのだ。 その上で協力をお願いしていた。 他の野郎が白鷺さんに触れることに我慢ならないから、私に協力してほしいと。 この二人は見事にやってくれた。 マッキーはともかく、優芽は何か言いたげだったけれども…乗ってくれた。 「ごめん…白雪姫…。」 目を瞑っている白鷺さんの頬を撫でる。 きっと何が起きているのか知りたいだろう。 でもここで目を開けてしまったら舞台は台無しになってしまう。 だから彼女は、今でも演技を続けている。 「君が私に振り向いてくれないから……悲しくて…。他の野郎を見てしまうくらいなら……いっそのこと……と思ったけれど…。」 『そう、魔女は美しい白雪姫に禁断の恋をしていたのです。白雪姫が想いを向けていた王子様に嫉妬して…報われない辛さに魔女は耐えられませんでした。』 さすがは優芽。 完全にアドリブなのに、上手に白鷺さんに矛先が向かないように誘導してくれている。 『だから、自分に想いを向けてくれない白雪姫を亡きものと思い、毒リンゴを食べさせたのです。しかし……。』 「謝って許されることではないけれど……それでも…私は、やっぱり笑っている君を見ていたい…。だからどうか目を開けて…。」 『亡きものにしてしまって、改めて彼女の存在の大きさに気付き、魔女はひどく後悔をしました。』 「私は君が好きです、白雪姫(ゆき)……。」 私はそっと白雪姫…白鷺さんにキスをした。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加