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「え……?」
タックルされた王子様は未だに状況が掴めていないらしい。
『実は魔女には、誰にも言えないもう一つ欲望がありました。』
ナレーションが変わる。
この声は優芽だ。
ちなみに先ほど照明を落としたのはマッキーである。
そう……私は、事前にこの二人に全てを打ち明けていたのだ。
その上で協力をお願いしていた。
他の野郎が白鷺さんに触れることに我慢ならないから、私に協力してほしいと。
この二人は見事にやってくれた。
マッキーはともかく、優芽は何か言いたげだったけれども…乗ってくれた。
「ごめん…白雪姫…。」
目を瞑っている白鷺さんの頬を撫でる。
きっと何が起きているのか知りたいだろう。
でもここで目を開けてしまったら舞台は台無しになってしまう。
だから彼女は、今でも演技を続けている。
「君が私に振り向いてくれないから……悲しくて…。他の野郎を見てしまうくらいなら……いっそのこと……と思ったけれど…。」
『そう、魔女は美しい白雪姫に禁断の恋をしていたのです。白雪姫が想いを向けていた王子様に嫉妬して…報われない辛さに魔女は耐えられませんでした。』
さすがは優芽。
完全にアドリブなのに、上手に白鷺さんに矛先が向かないように誘導してくれている。
『だから、自分に想いを向けてくれない白雪姫を亡きものと思い、毒リンゴを食べさせたのです。しかし……。』
「謝って許されることではないけれど……それでも…私は、やっぱり笑っている君を見ていたい…。だからどうか目を開けて…。」
『亡きものにしてしまって、改めて彼女の存在の大きさに気付き、魔女はひどく後悔をしました。』
「私は君が好きです、白雪姫……。」
私はそっと白雪姫…白鷺さんにキスをした。
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