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初めてするキス。
初めて奪う唇。
「ぇ………。」
さすがの白鷺さんも驚いたと思う。
だって本来ここにいるのは王子様で。
本来ならば、ここは顔を近付けるだけの演技のはずだったから。
「あの…阿島さっ…!?」
「だから王子、お前に渡さない。彼女は私のものだ…!!」
目を開けた白雪姫を……私は抱き上げて、体育館の出口に向かって走る。
「白雪姫はもらっていくぞ!」
『目を開けた白雪姫を魔女は抱き上げて、走り去っていきました。めでたしめでたし。』
『いや、めでたしめでたしじゃないよ!?ちょっと阿……魔女!!舞台めちゃくちゃにしておいて逃げないでよ!?』
ありがとう、マッキーと優芽。
ナレーションが戻っちゃったから本当にギリギリだったな。
「おい!待てよ!」
王子役だった野郎は、追いかけようとするが全く追い付けない。
それは、私がわざと観客のど真ん中を走ってるから。
こうすることで観客たちが自然と足止めの役割をしてくれる。
その間に……逃げるのみ!!
「阿島さん…!!いったい何を!!」
「………ごめん。」
謝ることしか今は出来ない。
お願いだから……暴れないで。
「………。」
私の想いが届いたのか、白鷺さんは大人しくしてくれた。
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