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朝、ホットケーキを焼く肇の隣には、扶実がいた。
「今! 今すぐ火から降ろして! そして、濡れ布巾でフライパン冷まして!」
「う、うん」
テーブルの上には、焦げたホットケーキが数枚、炭の臭いを放っている。
「ひっくり返して。早く!」
「わ、解った」
何てこと。
扶実は、呆れを通り越して面白くなっていた。
まさか肇が、料理はほとんどやったことがなかったなんて!
これでは、『おふくろの味』の再現は、まだまだ先になりそうだ。
でもそうしたら、それだけいっぱい肇の傍にいられる。
肇の料理の腕が上がるまで、ずっと彼の傍にいられるんだ。
「母さんの味とか何とか言いながら、この体たらく。情けないだろ?」
「全然!」
だってほら、4枚目のホットケーキはこんなに巧く焼けたじゃん。
甘い香りのキッチンに、二人の甘い生活が始まっていた。
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