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恥ずかしいから、出来るまで見ないでね。
こんな『鶴の恩返し』のようなことを言って、扶実はキッチンに籠った。
どんな料理なんだろう。
「初めに、俺の母さんのことを話しておけばよかったかな……」
肇は、弱気になっていた。
料理がもとで、恋にも弱気になっていた。
また、彼を失うようなことになったら。
扶実は、素敵な恋人だった。
明るくて、素直で、清潔で。
笑顔が素敵で、手が柔らかくって、キスは温かかった。
失いたくない。
扶実を。
でも、母さんの味にこだわらずにはいられない俺も、ここにいる。
「できたよ~。キッチンに来て!」
扶実の声に我に返った肇は、ドキドキしながらキッチンへと向かった。
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