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カップ麺をすすりながら、肇はつぶやいた。
「不味い」
肇の母親は、料理がとても巧かった。
彩り、香り、味、歯ごたえ、舌触り、喉ごし。
どれを取っても、逸品だった。
小学生の頃は給食がひどく不味く感じられ、食べることができなかったくらい、母の味は肇の味覚を支配していた。
母が若くして亡くなってからは、その味がなおのこと肇を縛った。
どこかに、いないか。
母さんと同じ味が出せる人は。
肇は、孤独だった。
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