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巨大なゴミの山は、今日も鈍重な面持ちで、異様な気配を撒き散らしながら、そこに黒黒と聳え立っていた。
このゴミの山はゴミ集積場であり、広陵とした土地に、毎日千トンものゴミが運び込まれてくる。
ゴミ山の周囲にはスラム街があり、そこからゴミを求めて、毎日数千の人々が押し寄せ、ゴミを拾いに来る。
そのゴミを生活の足しにしているのだ。
俺はまさに"ゴミ山の中の住人"だった。
観光客は、こんなところには誰もやって来ない。
この地では殺人、強盗が相継ぎ、毎日何がしかの犯罪が起きている。
前に俺も寝込みを襲われ、持っていた食事用のナイフを突きつけたことで難を逃れた。
襲ってきた奴は最後まで「食い物をくれ。何でもいいんだ!」と叫んでいたが、他人にくれてやる物など何も持っていなかった。
相手にこちらの空腹を説明すると、奴は昨日から何も食べてないんだと話したが、何もない俺にはどうしてやることも出来なかった。
奴は次の日、また他の奴の寝込みを襲ったが、相手はこの辺のギャングの一人で、奴は拳銃で撃ち殺された挙句、火を点けられてゴミ山に捨てられた。
ゴミ山には、幾つかのギャングがいる。
いつもゴミ山の利権を巡ってギャング同士で争いが巻き起きる。
その度に人が殺される。
だが犯人が捕まることもない。
凄まじい治安の悪さだ。
今日の被害者は老人だった。
銃で何発も撃たれて殺されていた。
ただのスラムの老人が、食うためにギャングに巻き込まれただけだった。
俺の今日の夕食は、街に出稼ぎに行って買ってきたトマトソースに豆を煮込んだシンプルなスープだった。
今、拾ってきたドラム缶の中にソースと豆を入れ、1時間くらい煮込んだものを作っている。
そいつを、一緒に街で買ってきた粗末なアラビアパンと一緒に食べるつもりだ。
毎日、朝、昼は、食べていない。
明日はクスクスを一食食べるだけだが、よく盗まれるので土の地面に穴を掘って、材料は隠してある。
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