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夕飯に、トマトソースに豆を煮込んだスープと粗末なアラビアパンを食べる。 それなりに美味く出来た。 たまに失敗して、訳のわからない食い物が出来上がることもあるが、今日のはまずまずだ。 アラビアパンをスープに浸して食べていると、それなりに空腹が満たされた。 本日唯一の食事だ。 街に出稼ぎに行った時に小綺麗な公衆トイレで、ポリタンクに汲んできた水を少しだけ飲み、今日の俺のディナーは終了した。 2年前、戦争が勃発し、住んでいた街は焼かれ、俺の家も爆破された。 幸い、敵軍襲撃の情報が早く届いていたので、家族共々避難していたから命は助かったが、俺が長年、誰にも会わず、引きこもっていた部屋は木っ端微塵に崩壊してしまった。 避難はしたものの、避難所が家族とはバラバラになってしまい、それ以来、家族とは離れ離れで会っていない。 家族が無事であることを祈りたいが、俺がいた避難所は、その後ドローンの攻撃に遭い、またしても破壊されてしまった。 俺はそこから命からがら逃げ出して、ようやくこのゴミ山に逃げ込むことが出来たのだ。 こんな地獄の最果てのような場所が、俺には最後の避難所になった。 俺はゴミ山のそばの、小さな丘の上に住み着き、洞窟のような洞穴を見つけて、そこに密かに住んでいる。 元々引きこもりのガキだったから、人と接するのは今でも極力避けたいので、こんな辺鄙な丘の上の穴倉にて一人で暮らすというのも、案外俺の性分には合っている。 俺は洞窟に生息する爬虫類みたいに、朝になると這い出してきては、ギャングが仕切るゴミ山の仕事や、街に出てのゴミ集めの出稼ぎで何とか生き延びている。 ゴミ山の仕事は、ギャング同士の抗争が勃発すると(これがよく巻き起こる)働いている者がいつも流れ弾に当たって死んでいるので、極力やりたくない。 だが街でのゴミ集めの出稼ぎがない時は、食うために仕方なくやらなくちゃならない。 長年、狭い部屋に引きこもり、ロクに働いたこともない俺だが、今は食うために駆けずり回らなきゃどうにもならない。 外で夕飯を食い終わり、しばらく住処の洞穴に戻って、寝転んでうとうとしていた時、遠くの方から人が走ってくるような音がした。 また寝込みを襲う強盗か? と思い、食事用のナイフを作業ズボンのポケットに忍ばせた。 しばらくすると、走ってくる音がさらに近付いてきたので、俺は身体を伏せて警戒した。 すると一人の男が洞穴に飛び込んできたので、俺はすかさず男に飛びかかり、奴の喉元にナイフを突きつけた。 だが男は、 「た、助けてくれ!殺される!」 と悲鳴を上げながら、俺の方を見て哀願した。 よく見ると、男は顔を血だらけにして、こちらを見ていた。 頭を酷く殴られているようで、そこから流れ落ちた血で、男は顔中血まみれになっていた。
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