ケイドロ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 そんな訳で、私は少々遺憾ながらも、今日から父を介護施設に入れることにした。施設の説明を受けていると、横で父と同い年くらいの車椅子に座った男性が介護士を困らせていた。 「後藤さん、また御飯残して、ちゃんと食べないと元気になれませんよ」 「いらん。元気になんて、ならんくていいわ」  私はその車椅子の男性を見て父に言った。 「ホラ、お父さんも頑張らないと、直ぐにあの人みたいに車椅子生活になっちゃうよ」 「それでもいい・・・ きぃさまあぁぁぁぁ、佐伯いぃ。こんな所に隠れていやがったなぁ!」 「てめぇフクロウの狩谷じゃねぇか。こんな所まで追いかけて来やがって、しつけぇ野郎だ」  父が持っていた杖をぶん投げて後藤さん、もとい佐伯さんに飛びかかると 佐伯さんは車椅子から飛び上がって走って逃げた。  そんな訳で父と佐伯さんは今日も今日とて、朝から晩まで元気に追いかけっこ、いやケイドロをして介護士の皆さんを困らせている。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加