終幕

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終幕

 鏡の長城内を探索したアリスは、キリギアリスが使っていたと思しき部屋を見つけることができました。  そこには、ちゃんと冬に供えて食糧が蓄えられていました。  アリスは、それら全てを自分の家と運び込みます。  そして最後に、これまでの獲物全てに――ウサギや、ネコや、ヤマネや、帽子屋さんや、施設の子供達に――そうしてきたのと同じように血抜きなどの処理をしたキリギアリスの体を、肉の保管庫に吊るしておきました。  これで今年も、無事に冬が越せそうです。    保管庫の明かりを消したアリスは、扉に手をかけて一歩外へと踏み出したところで立ち止まり、すっかり青白くなったキリギアリスの方を振り返りました。 「……本当はね、ちゃんと思い出してたよ」  逆光となったアリスの表情は、保管庫の内側にいる者からは窺い知ることができなかったでしょう。  もっとも、どのみちそこには意識のある者など誰もいなかったのですが。 「でも、生きるためには、仕方なかったんだ」  ぱたん、と音をたて、扉が閉じられます。  真っ暗になった保管庫には、冷たくなったキリギアリスの体が残されました。
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