大山 宏文

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「ゼリー、ありがとうな」 「え?あぁ、うん。ごめん、会えなくて」 “ゴホンッ”と後ろから聞こえる。真紀のその咳払いは “会えなくてじゃなくて会わなくてだろ?”と言っていた。  急須と湯飲みをお盆に乗せやってくる真紀がもう一つのに突く。 「あ、そういえばユウタ君、何処にいるんです?」 「…え?」と何故か少しまごついた返事をする親父。 「あぁ、犬、どうしたの?買ったの?貰ったの?」 「……家の中に、入り込んできてだな」  …まさかの答えだった。 「え!?迷子犬?野良犬!?お義父さんドア開けっ放しにしてたら危ないですよー!」 「てか、ここ犬飼えるの?」 「さぁ、下に住んでる男はネコに餌やっとるぞ」と、俯き加減で喋る親父。 「そ、それはまた違うと思うけど」 「因みにお義父さん…パグです?」 一瞬、“おいっ”と突っ込もうとしたが、正直なところ俺もそこは知りたいところだ。素直に答えを待った。 「……そんなに、ユウタが気になるか?」 「え、ええ、まぁ、うちと同じですし。今日も会うの楽しみにしていたので…ねっ宏文?」 「う、うん」  嫌なパスが来たがそう答えるしかなかった。 「……そうか」  “ゴトッ”  と、トイレから物音がした。
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