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「え、帽子、持ってるの?」
「……」
「え、被るの?」
「…おかしいか?」
「……いや、…おかしくないと思うけど…、なぁ真紀!?」
「うん!私は凄い似合うと思いますよ!やっぱりそうだったんですね!ほらー私間違ってなかったじゃない~」
……俺が思っていたイメージと違う。確かに普段接する事のない仲で知らない事の方が多いが、それにしてもだ。どうも信じられない。
「あ、ユウタ君寝てるのかな~」と疑いが晴れた真紀が機嫌よくユウタの居るトイレへと向かう。
その時だった。
「待て!!」
と、親父がまた声を張った。
「な、なんだよ、さっきから大きな声だして」
「いや、ユウタに言ったんだ。大丈夫だユウタ、私の家族は危害を及ぼさない」
トイレのドアから後ずさりする真紀。
「え、機嫌悪いんですかユウタ君…もしかしてピットブルか何かですか?」
「土佐犬?」
「えー!」
走って戻ってくる真紀。
すると親父がスッと立ち上がり、奥の布団が敷かれた部屋へと歩いていく。
「ちょ、なになになに今度は!?」と俺は親父の奇妙な行動の連続に恐怖を感じてくる。
すると奥に行った親父が何かを漁りながら喋りかける。
「確認しとくがそっちの雄太は連れてきてないよなー?」
「はい、家で留守番してますけど…」
「おい真紀、親父ボケたと思うか?」
新聞紙の音が聞こえる。
「んー、今これから何を持ってくるかに寄るわねぇ…」
姿を見せた親父は手に新聞紙と何か軍手の様な物を持ち、そのままトイレへと入って行った。
「……あ、もしかしてユウタ君を新聞紙で隠して、ここへ連れて来てジャジャーン!パグでした!的な?」
「よくそんなポジティブ思考にもってけるよな?完全にボケちゃってるよ。あぁー嫌だなぁ一緒に住むのは。どこかデイケアかデイサービス的なぁー…」と喋っている時だった。
“ガチャ”
静かな音を立ててトイレのドアが開らき、真紀とトイレの方へ顔を向ける。
「え…」
「きゃー!」
真紀が思わず抱きついて来きた。そして俺もそのまま椅子を引きずり壁にぶつかる。
「えっ?えっ?えっ?」
親父がユウタの“手を引いて”出てきた。
「紹介する……ユウタだ」
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