毛利 拓郎

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   あれ、一匹居ねぇな…。  猫用のドライフードを一粒一粒、窓から小石の様に投げる。  敷地内にはいつも決まった5匹の野良猫がやってくる。今日は珍しく最後まで一匹現れなかった。 「おーいどうした、喧嘩したのかー」   に飽きた俺は餌を盛った皿を外に置き、窓を閉めた。  椅子に座りパソコン作業に戻る。 「はぁぁぁー。進まねぇ」  今年中には終わらせないとコンテストに間に合わない。  小説家を志して10年。  過去に3度賞を取った事はあるけど、どれも銀賞や佳作、良くて特別賞。あと一歩の所で書籍化を逃した。今思えばその中途半端な成績を残した事で諦めきれていない自分が居るんだなと、後悔さえ感じている。
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