毛利 拓郎

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翌朝。 バイト先のスーパーに向かおうと団地から外へ出た時に子供の声が聞こえた。 “あー見てー!大きー!”  振り向くと二階の玄関前で爺さんと向かいの家族が鉢合わせていた。  俺は咄嗟に目の前にあるチャリ置き場の策の裏側へ隠れた。  見ると5歳くらいの男の子が虫取り網を持っていたのだが、爺さんはその倍くらいの長さの網を持っていた。しかもそれは雑に作られた物で、竿は緑色の細い支柱、網の部分に関しては台所にあるような小さな笊が付けられていた。そして左手にはスーパーのビニール袋…。  その爺さんの異様な姿に後から出て来た親も気まずい雰囲気で出ていく。  あんな物持って何処へ行くんだ…。  下へ降りて来る爺さんはそのまま止まる事なく歩いていく。
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