大山 宏文

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 会議には余程の事がなければ自分は参加出来ない。飽くまで部長のプレゼンテーションのサポート役、しかし会議中の部長を待っている時間は気が気じゃない。  部長が会議を終えて戻ってくる。部長の浮かない表情を見たら“どうでしたか?”と聞くまでもなかった。 「何がダメでした?」と、重い空気の中に正英が平然と入って来る。 「んー、まぁ色々あったけど、ジャンル分けをもっと増やすのとー」  俺はそんな事よりもギリギリで修正を掛けられた、柄が先かサイズが先か問題を知りたかった。 「あの、あれは言ってましたか?今日直した柄とサイズの事」と部長に尋ねてみる。 「ん?あぁそれは特に何も」 「え?」 「何も言ってこなかったからあれで良かったんじゃないかな」と、目も合わせず流すように話す部長。  ……そうじゃないんだよ、橋爪部長。  それだったら元々設定してあった柄選びが先でも良かったかもしれないじゃないか。むしろ柄選びでいってたら、”あぁ、そっちの方が良いかもね”って言われていた可能性だってある。  結局、今日の作業時間は何だったのかと、一番聞きたかった事が分からず終いでやり過ごされた俺は深呼吸をし、怒りを抑えていた。  そして俺の心境が分かっている正英は無言でただ俺を見ていた。  分かっている。お前の言いたい事は無言でも犇々と伝わってくる。しかし上に言いたい事が言えないのが俺だ。  今日正英に言った事も自分のどこかでただの言い訳なんじゃないかと、正直思っている。  情けないと少しは思うが、仕事には貢献しているつもりだしそれにその分の給料もちゃんと貰っている。納得いかない事があっても我慢すれば面倒臭い話から逃れる。自分はこのスタイルが合っているのだ。  部長から各々へ課題を割り当てられたが、俺はやる気が起きずその日は定時で家へと帰った。
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