大山 宏文

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「はっはははっ」とテレビを観て笑っている真紀の声が響く。俺は宇宙人や超常現象特集の番組はドキュメント感覚で観ているのだが、真紀は基本的にそういう番組はバラエティ感覚で観ている。 この大量のカレーといい、を観て聞こえてくる笑い声に苛立ちが募っていく。 鍋を火にかけ、乱雑に収納された冷蔵庫内を眺める。カレーは2日目が美味しいというがこの家で3食連続して食べている身としては味を大きく変えたい。 「チーズかなんかないの?」 「あるよ?雄太のチーズ」  唯でさえプレゼンの事で気分が晴れていない。いつも聞いている真紀の冗談も今日は腹が立ってしょうがない。 「食べるわけないだろそんなの!」 「何よー、ただの冗談じゃない。プレゼンが上手くいかなかったからって怒らないでよ」  思わず冷蔵庫をあさっている手が止まってしまった。 「は?何で分かるんだよ、そんな事」 「だって今日プレゼンあるって言ってたじゃない」 「だから何で上手くいかなかったって分かるんだよ?」 「だって上手くいかなかったんでしょ?」 「まだ言ってないじゃんそう言う事」 「じゃあ上手くいったの?」 「いってないよ」 「いってないじゃん」 「いってないよ?いってないけど言ってないのにいってないとか言うなよ」 「だって、オーラでわかるもん」 「オーラ?」  普段絶対に使用しないワードをこういう時に使うのは真紀の俺に対する攻撃の一種だ。
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