大山 栄一

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 翌朝、ユウタのご飯をどうするか考えていたら、ある生き物を思いついた。  いつも散歩で行っている公園の池にミドリガメが沢山居る、それにしよう。  いつからかやって来たこの外来種の所為で、本来居るはずの二ホンイシガメが居なくなってしまった。生態系を破壊し続けるこの恐ろしい亀を、前からどうにかしてやりたかった所だ。  台所にある笊を、針金やガムテープを使って無理やり支柱に張り付ける。  その最中、テレビを見ているユウタが「なぜこの人は声を出して褒められている」と聞いて来た。  画面には誰だかわからないがステージで歌っている映像が流れていた。 「歌を歌ってるんだ」 「あー、これがウタか」 「お前の世界には歌がないのか?」 「ユウタの世界にはない」 「音を楽しまないのか……まぁわしも似たようなもんか」 「栄一、なにしてる」 「お前のー……ユウタの食べ物を取ってくる」  改造した支柱を見るなり、「なにそれ!?お~~」と嬉しそうに近寄って来るユウタ。孫が居たらこんな感じなのだろうか。 「近くの池に捨てられたペットが繁殖しててな。外来種で日本の生態系を破壊しているんだ」 「捨てられた?ペットは愛しむもの。間違っているぞ、栄一」 「……あぁ、人間は身勝手なんだよ」 「栄一、どうか活きのいいのをお願いします」 「お願いしますが言えるようになったか」 「現地での修得進度はトントン拍子です」 「いいか、テレビと本しか触るなよ。電話は出るな」 「承知した」
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