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「おい、もっと離れて観ろ。目を悪くするぞ」
と一人、夕食を食べている栄一がユウタに注意する。
「え!?何故そんな重要な事早く言ってくれない!」
「あ?ああ、まぁ直ぐには悪くならないと思うが」
「なんだよ、ドッキリかよ!」
「……」
「そんな事より栄一、なぜ彼は押すなと言って押さないと押せと言って怒っている?」
バラエティ番組を見てユウタが困惑していた。
「えーとー、日本のお笑いってやつだ」
「お笑い……」
「ゲルポ人は笑うのか?」
「声出して笑わない、栄一と一緒」
「いや、わしはー、……まぁそうか」
「でも面白可笑しくは思うぞ。そんな時は大きく口を開けてベロを出す」
そう言ってベロを出し身体を揺らし始めるユウタ。
「…ほう。それがゲルポ人の“笑う”か」
「栄一もそうか?」
「いや、わしも他の地球人と一緒だ」
「嘘だぁ?」
「嘘じゃない」
「やってよ」
「は?」
「やってよ。私も見せたでしょう」
「…出来るか、面白くもないのに」
「なんでやねん」
「おい、お笑いの見過ぎだ」
「ビビっとるやん」
箸が止まる栄一。
「生で見たいんや。これも勉強や」
「ったく、くだらん」
再びご飯を食べ始める栄一。腹が立っている所為か、箸で掴んだ魚の身が口元で落ちた。
視線を感じる。
ユウタを見るとこちらを向いてベロを出して身体を揺らしていた。
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