大山 栄一

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「おかえりなさい」 「ただいま」  普通に答えたが、〝ただいま〟と言ったのはいつ振りだろうか。思いだせない…、そんな事を思っていたら電話のボタンが点滅しているのが目に入った。留守番電話だ。 「電話鳴ったのか?」 「出てないよ。でも勝手に喋ってた」  ボタンを押し、声が流れる。 〝もしもし?宏文だけど。やっぱりこういう機会がないと一緒にー食事なんて、あまりないからさ、お祝いさせてよ…って真紀もそう言ってるし、一応場所も予約したから。詳しい事は会って話そ〟 「……」 〝今日のお昼前に真紀と顔出すね、じゃあ〟 「何?……昼前?」 「昼前は正午になる前だから今も昼前」とテレビを見ながら喋るユウタ。  その時だった。 “ピンポーン”  インターホンが鳴った。 「おい、ユウタ」 「持っていっていい?」と一匹残っているミドリガメを手に取る。みなまで言わなくても察するユウタに感心したが、今はそれよりもどうするかを考えなくてはならない。果たして隠しきれるだろうか。  トイレに入って行くユウタ。 「……」  とは言っても、今一番信用出来る人間はあの2人だけかもしれない……。  トイレのドアを見つめる栄一。
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