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“ジャー―”とトイレが流れる音がする。中から真紀が出てくる。
「お前よくこのタイミングでトイレ行けるよな」
「しょうがないじゃない、我慢は身体に悪いのよ?で、今どの辺?」
相変わらず真紀の能天気さには驚かされる。
「まったく、映画の話してるんじゃないんだよ。えーとー、さっきトイレで亀食ったとこ?」
「え!ちょっとやだウソでしょ?なんか生臭かったけどそれ?うっ……」と口を押える。
「おい、我慢しろよ?」
頷く真紀。
ゼリーを食べ終えていたユウタが、
「人は不条理で面白い」と呟いた。
それを聞いた人間達は何も言う事無く、互いを見合った。
一拍の沈黙の後、宏文が口を開く。
「ま、まぁなんとなくは分かったけど。何か決定的な証拠っていうか――」
確かにここまでの経緯は分かったが、言ってもユウタとはついさっき会ったばかりだ。信じられないと言うよりかは信じたくないと言った方が正しい。出来ればこの話も嘘であってくれと願う。
俺は異星人の存在は信じている。しかし信じているからこそ目の前に居る人物が異星人だとは思いたくなかった。思うのが怖かった。
それに今ここで、長年論議されてきた宇宙人は存在するのかという問題に結論が出るのも嫌だった。
死ぬまで謎でいいんだ。これは憧れの人に会いたくないという感覚に近い。憧れは憧れのままで終わりたい。
だが次の瞬間、ユウタがその想いを打ち砕く。
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