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美少女だ、美少女がいる!!
アイドルじゃなくておとぎ話に出てくるような可憐なお姫さまだ。
明るくない茶色のまっすぐ長い髪と肌は透き通るくらいの色白で、薄紫のふんわりちょっと透けたようなスカートのワンピースがとても映えて似合う。
宝石ばかりでかためていない白い真珠のみを華奢な首元に飾っている。頭のトップには紫と白のカチューシャ。
身長は平均のオレより若干高めだけど、なんて清楚なんだろう……!
「ふわぁ~」
思わず、鼻の下が伸びそうになって手のひらで口元を抑えた。
周囲の大人たちもただ事じゃない美少女を見て美しいと歓声を上げている。
そしてオレは美少女と目があってしまい、にっこりと柔らかく微笑む天使のまなざしに囚われた。
もうどうなってもいい!こんなことを思うのは男の性かもしれない!騙されたってイイあの娘なら。
なんて、この時はその眩しさに我も忘れていた。
父さんが、ワケのわからない行動を起こした。
美少女をなんとオレの前に連れてきて紹介をしたのだ。
ふんわり花のイイ匂いがする~~っ
「えー、尚史、こちらの“お嬢さん”は久留米浬委さんだよ」
「こんにちは、浬委です。やっと会えた……ボ、ボク…ワタシ? あの、尚史君と会えるのを心待ちにしていました」
ぶ、えええーーっ! ぼくっ娘!そ、それもオ、オレを知ってるの!?
「え…あ…っ?」
「驚いてるようですね? きっと、ボクだけなのかもしれません。……だって一目ボレだもの」
「―――ッ!?」
ひ、一目ボレ……なんて、オレの耳が調子よくて、だから聞き間違えだよね!?
そんなんでこんなんでもはや言葉にもなってなかったし、言葉を掛けられると叫ぶだけで自己紹介も出来てなかった。
こんな変なオレに、浬委さんは優しく朗らかに微笑んでくれていた。
浬委さんが言っていた一目ボレが本当にあるとしたら、オレもこの場で浬委さんに一目ボレをしたと思う。
今までにないような柔らかな雰囲気の女の子。
頬を桃色に染めて恥じらうようにオレに声を掛ける姿はくすぐったい。
とても可愛いと思う存在の人。
もう、ほんと――恋をした。
それからは浬委さんと一緒にパーティを楽しんでその間は夢心地であまり覚えていないけど、オレの父さんがシルバーダンディな浬委さんのお父さんにめちゃくちゃ気を使っていたのだけは見て取れた。
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