第一話 パーティでの出会い

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第一話 パーティでの出会い

 数百人収容できるとされる高級ホテルの会場には天井高く眩い照明、円形型で白い絹のテーブルクロスの上には豪華なフレンチのフルコース。  ホールスタッフの人たちが優雅なお客さんの間を踊るように行きかっている。  今日は父さんの会社社長の友人であるパーティで、どういう訳か珍しく息子のオレが招待客に招かれた。  賑やかな声を広げているけれど、どの方向を見ても威厳があり高級ブランドに仕立てた三つ揃えのスーツ姿の男性の大人たちと、宝石をあちこちに飾った華やかな装いで周囲を湧かす女性たち。 会社関係なのか私的パーティなのか定かではないけど、とにかく華やかな世界だった。  オレのような高校生で浮いている存在は邪魔をしないで、隅の方でパクパクとフレンチをつまみ食いをしているに留まるしかない。  特に父さんはオレを連れ回して人に紹介するほどでもないし……一体、オレは何をしに招待をされたのか首を傾げる。将来的に父さんの会社を継ぐのでその予行練習なのかな?  オレにしたらば本来ならこんな賑やかな場所には来たくないし、どちらかと言うと苦手だ。今回、父さんの誘いを受け入れたのは気休め程度だった。  実はオレは傷心中なのだ。失恋って訳でもないけどそれに近い感じ……。  顔や見た目は平凡だけど<健やかな健康を>のキャッチフレーズで某通販会社のTVを湧かす『玉井』という会社社長の息子であるオレに、学校で格上カースト女子や男子が近づいてくる事が多々ある。  学年で一番可愛いとか美人とか噂されている女子に告白されて付き合っては見たものの、想像していた男女の付き合いとはかけ離れたデートや振る舞いに悩むことはあったけど、それでも愛情は感じるので月々のお小遣いの中で彼女の欲しいと謂うモノをデートに行く度にプレゼントをした。  それはとてもお金がかかる。彼女ってそういうものだと思っておねだりされて甘えられるのも嫌じゃないし、プレゼントをするととても感謝をされて可愛らしく微笑むから……。  そんなことが懲りずに中学から高校の2年生の今まで何回かあった。友人たちには羨ましがられるけど、彼女が居たのにまだ童貞なんて断じて言えない……。  付き合っていくうちにオレ自身を見てくれているんじゃなくて、オレの財布の中身と家柄としてのステータスなのだと感じて一人でイジケて絶望して……。  オレって女運がないのかな、なんて思ってわびしくも今日の豪華なフレンチをやけ食いするには悪くなかった。  そんな事をぼやっと考えていたら、パーティ会場の上段の方で今回一番の歓声が上がった。  オレをほって置いた父さんがやって来て、腕を引かれて上段の方へ連れていかれる。  まだフレンチ、食べていたかったのにな~
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