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プロローグ
夜中の三時半、峠を越える道を一台の車が爆走をしていた。他の車がいない事をいい事に走っているのだろう。
「ちょっと〜! スピード出しすぎよ? ケンジィ〜!」
「いいんだよ! こんぐらいのスピード出さないと、つまらないじゃん!!」
曲がり角を急カーブする。一歩間違えれば、大事故に繋がるかもしれないのに。若い男女は、それすら頭に入っていないのか、車の爆走を楽しんでいた。
そして、峠を終える直前、車が急停止した。助手席に乗っていた若い女が、ドアの窓に頭をぶつける。
「いったぁー、何? どうしたの?」
ぶつけた部分に手を添えながら、運転していた男に声をかけた。
「いや、見ろよアレ」
「ん? え」
男が指差した方には、墓地への入り口があった。申し訳程度に入り口の横には、【八雲墓地】と、寂れた看板に書かれていた。
男は隣に座る女に、「なあ、中入ってみねぇ?」と、提案する。その両目には好奇心と興味心が入り混じっていた。
女は、「いやよ! 怖いもん」と、可愛らしく否定した。
「ねえ、戻りましょ? なんだかキミワルイ」
「まあまあ、いいじゃないか。な、少しだけ、な?」
男は女の拒否を無視して、車から降りた。
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