プロローグ

1/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

プロローグ

夜中の三時半、峠を越える道を一台の車が爆走をしていた。他の車がいない事をいい事に走っているのだろう。 「ちょっと〜! スピード出しすぎよ? ケンジィ〜!」 「いいんだよ! こんぐらいのスピード出さないと、つまらないじゃん!!」 曲がり角を急カーブする。一歩間違えれば、大事故に繋がるかもしれないのに。若い男女は、それすら頭に入っていないのか、車の爆走を楽しんでいた。 そして、峠を終える直前、車が急停止した。助手席に乗っていた若い女が、ドアの窓に頭をぶつける。 「いったぁー、何? どうしたの?」 ぶつけた部分に手を添えながら、運転していた男に声をかけた。 「いや、見ろよアレ」 「ん? え」 男が指差した方には、墓地への入り口があった。申し訳程度に入り口の横には、【八雲墓地】と、寂れた看板に書かれていた。 男は隣に座る女に、「なあ、中入ってみねぇ?」と、提案する。その両目には好奇心と興味心が入り混じっていた。 女は、「いやよ! 怖いもん」と、可愛らしく否定した。 「ねえ、戻りましょ? なんだかキミワルイ」 「まあまあ、いいじゃないか。な、少しだけ、な?」 男は女の拒否を無視して、車から降りた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!