無気力染みた

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無気力染みた

博物館の中は、人の気配がなくがらんとしていた。 少々の価値のあるものや、この地域での歴史を綴った展示物があるだけで、他には申し訳程度のお土産屋さんがあるだけだった。 その展示物の一角に他とは完全に異なる展示方をしたものが、解説パネルと共に展示してある。 他の展示物と雰囲気が圧倒的に違う。 まさに、子供の落書きがそのまま出てきてしまったかのような異様な見た目のものがガラスの中に透明な液体で漬けられていた。 懐かしいと、手を伸ばしそのガラスに触れる。 乳白色の体や、濁った目を正面から見つめていると、何処か薄ら寒いものを感じえなかった。 憂いを帯びる真希の瞳に、映り込む濁った目の不思議な生物。 真希以外はいないこの博物館で、それが酷く不気味に感じた。 幼き頃に感じた、いつか動くかもしれないという予感は大人になった今でも変わる事なく真希の心の隅に存在していた。 そのまま、少しの間見つめ合っていたけれど、なんとなく怖くなったのでふいと体ごと目を逸らした。 そして、改めて自分以外の誰もいないのを確認し、真希は心底疲れ切った表情で 「疲れた。」 その言葉は嫌に、誰も居ない博物館で響いた。 と、真希の目から涙が流れた。 静かに声すら上げず真希は疲れた表情で涙を流していた。
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