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落ちてきた
青白く輝く光が空の彼方から落ちてきた。
神秘的に輝く完璧な球体であった。
が、落ちてきたものは球体とは程遠い不可思議な形をしていた。
遠目から見たら完璧な球体だったのだが近くで見てみるとそれとは程遠く、二度と動かないであろう落ちてきたものは、
例えるのなら蛸のようであった。
そう、そうだ、蛸にそっくりなのだ。
小学生が描くような細長くまぁるい頭を描いて、目を点々と付けて、目の下の中心あたりに二重丸を描き、線を8本引いた。
そんな落書きのような蛸にそっくりであったのだ。
大きな違いといえば、乳白色であり、手脚が6本であるというところだろうか。
まぁ、そんなものが空から降ってきた。
そりゃあ、大騒ぎ!
変な研究者何やらが来たり、見つけた人が蛸の権利を主張したりと大変であった。
そんな中蛸のようなものを手にしたのは、落ちてきた市であった。
その市は、特になんの特徴もない緑の多い普通の田舎あった。
市長は蛸のようなものを透明な液につけて
博物館で展示した。
死んでしまったからであろう濁った目、長い6本の手脚であろうもの。
この世のものとは思えないほどの奇妙な物。
生き物だったのか、そうじゃないのか。それはわからないけれど、博物館に展示されたばかりの時、母に連れられて見にきた私は、それがいつか動くのではないのかと幼心ながらに酷く印象に残っている。
そんな、日本を騒がせた蛸は時の流れによって段々と忘れられていった。
初期の方にはあんなに居た客たちも今では、こんな田舎に来る人は殆ど居らず。
時折、地元の人が博物館に行くぐらいになってしまった。
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