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深雪は小さく唸って椅子に深く背を凭せ掛けた。足を組み替える。 「嫌いの理由はわかる?」 「子どものとき襲われて、トラウマになったと言ってました」 「なるほど。じゃあまずは子犬とか、大人しい子と過ごしてみるといいんじゃないかな。そうすれば、だんだん慣れてくる。彼が怖がる理由は噛み付いてくるんじゃないかとか、不安要素があるからだろう。その不安がなくなれば、すぐに打ち解けられると思うよ、心から嫌ってる感じじゃなさそうだしね。 逆に最初から何もしないとわかっていれば、怖がる理由もないから大丈夫かもしれない」 シュンロンは二人の先生を交互に見遣った。二人とも、わが子を見守るような温かい目で彼を見つめ返している。どちらもシュンロンとは直接関係ない人なのに。 胸に熱いものが込み上げてくる。 「ありがとうございます。一度、真剣に向き合ってみます」 シュンロンはそのまま一礼すると、清々しい笑顔を残して部屋を出て行った。 残された二人は同時に笑みを溢していた。 「あの時すぐに打ち明けてくれなかったのは、僕が信用できなかったからか?」 「君とはまだ付き合ってなかっただろ。あの時は」 「とか言って、僕のオオカミ研究対象にされるのが嫌だったんじゃないのか?」 「かもな」 ルドルフは気楽に肩を揺らした。深雪は疑り深い目を向けてくる。 「まだ言っていないことが?」 「君に対する思いなら伝え切れないくらいだよ」 一気に深雪は赤面していた。顔を逸らすより先に、さっとキスを仕掛けられる。抗議しようとした言葉すら遮られた。 「今夜、ゆっくり教えてやるから楽しみにしてろ、吉野先生」
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