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難問に彼方が頭を悩ませていると、彼方から返事を貰ったことがよっぽど嬉しかったのか、童顔の女子は顔を輝かせて喜んだ。
「わあ、ありがとうございます!お決めになっていないのは、ご衣装の事ですか?でしたら私の実家がアパレル関係なので、良かったらそちらに…」
「ちょっと、東山様の事だからもう決めてらっしゃるわよ。差し出がましい真似はしないで」
後ろの女子が怒った顔で横槍を入れる。どうやらその女子生徒には、呟く程度だった彼方の声は聞こえていなかったらしい。
強い物言いに、童顔の女子生徒がムッと口を尖らせる。
「何よあなた!東山様が決めてないって言ったのよ?それとも、もう耳が遠いのかしら?嫌だわ」
「何ですって!?あんたが近いのよ離れなさいよ!」
売り言葉に買い言葉。危うく近距離での掴み合いの喧嘩になりそうだったのを、彼方が間に入って静めた。
「服は自分で決める。だからもう騒ぐな」
彼方が一言そう言えば、女子生徒達はシュンと申し訳なさそうに謝罪する。
ひと段落した所で、長い距離に感じられた教室にようやく到着した。
今朝の満員電車から抜けるように、彼方はすぐに教室へ飛び込んだ。彼方が教室に入った事で、コバンザメのような集団は名残惜しそうに挨拶して散っていく。
自分の席について、疲労がどっと押し寄せた。もうこのまま寝てしまいたい。
机に顔を伏せて目を瞑る。クラスの取り巻き達がチラチラ彼方を気にしていたが、流石に彼らは寝ている彼方を起こすような真似はしない。
HRになり、担任が教室に入ってくるまで彼方は熟睡した。
担任の朝の挨拶で目が覚め、もうそんな時間かと携帯で確認すれば、新着のLINEが来ている。
LINEを送ってくる奴なんていたか。と不思議に思って開けば、いつの間に入れたのか、送り人は橋水で。
「起きろー🐶」と絵文字付きの短い文だ
クソ似合わないな。と率直に彼方は思った。どんな顔してこれを打ったんだ。アイツ
メッセージを無視しても良かったが、何か意趣返しをしようと彼方は返信を考えた。顎に手を当てうーんと唸る。
担任や生徒達、クラス中が、彼方の行動を注目しているなど全く気づかずに、彼方は返事を考え続けていた。
この出来事が、彼方の恋人説を高める大きな一因となる。
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