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HRと1時限目が終わり、休み時間になって集まってきた取り巻き達に、普段通り彼方は対応していたが、その意識は机上に置かれた携帯にあった。
HR中に打った文。もう橋水は見ただろうか。もしかしたらまた返信してくるかもしれない。そんな事を考え彼方はソワソワしている。
「東山、ココわからないんだけど」
取り巻きの1人の男子生徒が、彼方に先程の授業の教科書を見せた。
基本、様付で彼方の恋人の座を狙う女子達と比べ、取り巻きであろうと男子はフランクに接してくる。東山製薬との事業提携、M&A狙いな事が多いが、こうして勉学のことを聞かれることも多々あった。
「ああ。これは以前習った式を代入して…」
チラチラ。携帯は依然何も変わらない。
橋水は何をしてるんだ。もう休み時間が終わるぞ。他人とあまり連絡をとった事のない彼方は苛々した。
彼方の説明を聞き、理解した男子生徒はお礼を言って席を離れる。そうすると、次に湧いてくるのは女子生徒達だ。
皆、彼方が創設祭の話をしていた事を噂で聞いており、それについて盛り上がっていた。
「お召し物はどのようなお色になさるんですか?私東山様と同じ色のドレスで参加したいわと思っておりまして」
「東山様ぁ私、是非パートナーになりたいです。まだお決めになっていないんでしょう?エスコートするお相手」
口々に質問をされ、彼方は「そうだな。考える」と曖昧に濁す。彼女達は返事があれば喜ぶので、明確な答えは必要なかった。
エスコート相手よりも、金がないんだよコッチは。と彼方は内心悪態をつく。
そしてまたチラリと携帯を見て、がっかりした。返事がない。
何故だと。いよいよ本人に目を向ければ、橋水は数人の生徒と談笑していた。橋水の席を3、4人が囲い、中には女子生徒もいて何か言っては笑い合っている。
随分と仲が良さそうだった。彼方はこれまで目もくれていなかったが、橋水の周りはいつもあんな感じなのだろうか。
彼方はじっとその光景を見る。声を出して笑う橋水の姿が新鮮だった。
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