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返信が来たのは、よりにもよって授業中だった。
4限目の自主学習。通常なら会社法を学んでいる時間だが、今日は担当の教師が休んでいる為自習となっている。
彼方も簿記試験の勉強をしていたが、不意に鞄の中を漁った時、入れていた携帯が点滅していることに気づいた。
えっ、ドキリと彼方の心臓が跳ねる。間髪入れずに携帯を掴みLINEを開いた。
橋水からの返事は、
「なにそれ(笑)」とまた短い文だった。
もっと何かないのか。彼方は呆れたが、それでも知らず知らずの内に頬が緩んだ。本人にその自覚はない。
彼方の指が画面を滑る。橋水の席を見ると、彼は何か読んでいる所だった。
しかし彼方がメッセージを送ると、橋水がさりげない動きで机の中から携帯を取り出した。画面を確認し、口を押さえる。笑っているようだ。
すぐに返事が来た。
「そっちこそ使ってるじゃん」
「授業中に携帯を弄るな」という彼方の送ったモノに対してだ。しかし、返しの文章を彼方が書いている間に、もう一通来た。
「今なにやってる?」
会話の種がなくなった時の定型文のような質問だ。書いていた文字をリセットし、彼方はもう一度打ち直す。
>試験勉強だ。簿記のな
>あー俺も前にやってたな、それ
>おまえは?
>本読んでるよ。あとお腹空かせてる
>それはどうでもいい。
>弁当あげようか?
>頼む
それを返信した時。丁度授業終了のチャイムが鳴った。今からは昼の時間だ。彼方は既読になったそれを鞄の中にしまう。
ガヤガヤと。彼方の周りに集まる取り巻き達の中。橋水は、彼方と目が合うと小さく笑った。
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