居候と自立

14/18
前へ
/60ページ
次へ
返信が来たのは、よりにもよって授業中だった。 4限目の自主学習。通常なら会社法を学んでいる時間だが、今日は担当の教師が休んでいる為自習となっている。 彼方も簿記試験の勉強をしていたが、不意に鞄の中を漁った時、入れていた携帯が点滅していることに気づいた。 えっ、ドキリと彼方の心臓が跳ねる。間髪入れずに携帯を掴みLINEを開いた。 橋水からの返事は、 「なにそれ(笑)」とまた短い文だった。 もっと何かないのか。彼方は呆れたが、それでも知らず知らずの内に頬が緩んだ。本人にその自覚はない。 彼方の指が画面を滑る。橋水の席を見ると、彼は何か読んでいる所だった。 しかし彼方がメッセージを送ると、橋水がさりげない動きで机の中から携帯を取り出した。画面を確認し、口を押さえる。笑っているようだ。 すぐに返事が来た。 「そっちこそ使ってるじゃん」 「授業中に携帯を弄るな」という彼方の送ったモノに対してだ。しかし、返しの文章を彼方が書いている間に、もう一通来た。 「今なにやってる?」 会話の種がなくなった時の定型文のような質問だ。書いていた文字をリセットし、彼方はもう一度打ち直す。 >試験勉強だ。簿記のな >あー俺も前にやってたな、それ >おまえは? >本読んでるよ。あとお腹空かせてる >それはどうでもいい。 >弁当あげようか? >頼む それを返信した時。丁度授業終了のチャイムが鳴った。今からは昼の時間だ。彼方は既読になったそれを鞄の中にしまう。 ガヤガヤと。彼方の周りに集まる取り巻き達の中。橋水は、彼方と目が合うと小さく笑った。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加