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桜あんぱん、すき?
「……あれ? 奏ちゃん」
ひらかれたドアから顔をだした相手をみて、私はおもわず間の抜けた声をだしてしまった。
だって、私は奏ちゃんではなく、リエちゃんに会いに彼女の家へとやってきたのだから。
もっとも、奏ちゃんとリエちゃんは義理の姉弟。
現在奏ちゃんは1人暮らししてるといっても、ここは奏ちゃんの実家でもある。
彼がこの家に帰ってきていても、なんの不思議もない。今日は週末だし。
でも――。
(この家で奏ちゃんと会うのは、とってもひさしぶりなうえに――ついさっき私がインターフォン鳴らしたとき、対応したのはリエちゃんだった)
だから、てっきりリエちゃんが玄関ドアをあけたのだとばかり思ってたのに……。
手に おみやげ(美味しくて評判のあんぱんなどなど人気店のパンが入ってる紙袋)をかかえて、ドアがひらかれるのを待っていた私をでむかえたのは、奏ちゃんだった。
どういうこと? リエちゃん数十秒前に「すぐドアあけるからちょっと待ってて」って言ってたのに、と思っていると――。
玄関にいても2階(リエちゃんの部屋があるあたり)から、せわしない物音がしていることに気づいた。
(リエちゃんは、2階からインターフォンをとったけど、現在とりこみ中ってこと?)
そう思ったとき。春物のコートを着たリエちゃんが猛スピードで階段をおりてきた。
私に向かってリエちゃんは早口で告げる。
「あたし、バイトのシフトを勘違いしてて、今から急いで出勤するからっ! 『今日はずっと予定空いてるから遊びにきて平気だよ』なんて返事して、ごめん! じゃあ、遅刻しちゃいそうだから、バイバイっ」
「わ、私のことなら気にしないで。リエちゃんが時間ある日にでも、また……」
「うん、また連絡するから。あ、奏! 今日はあんたがあたしの代わりに遥にお茶でもだしといて。じゃあ、頼んだからね」
「わかった」とうなずく奏ちゃん。
リエちゃんは玄関を飛びだし、バイト先へと急いで出かけていってしまった。
~つづく~
(連載中の作品のためストーリーは途中までです)
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