秋晴れの下、今日もあなたと。

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発端は、お盆を過ぎて急に涼しくなってきた頃。 叶多くんに掛かってきた一本の電話だった。 その時は丁度、夕飯を終えて次のカフェの定休日に行く秋キャンプの場所をどこにしようかと話し合っていた時だった。 私はこの時期のキャンプが一番好きだ。 夏のオンシーズンに比べてキャンパーがグッと少なくなるし、何より虫が少ない。 蚊やアブなら虫除けの線香やスプレーでどうにかなる。でも、大きな蛾がトイレや外燈の明かりに吸い寄せられて大量に集まっているのを見るとザワッとしてしまう。あれだけは何度キャンプしていても苦手だ。 北海道の秋はとてもせっかちで、あっという間にやってくる。日中は日が射せばまだ暖かいが、日が落ちれば急に寒くなる。 夜なんて焚き火の周りだけが暖かく、少しでも離れたらひやっと肌寒い。一度冷え切ってしまった体は中々温まらないだろう。 だから近くに温泉があってそれでいてマイナーで静かな、そんなキャンプ場を探していた。
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