第41話 ノマデスの森を救え!

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第41話 ノマデスの森を救え!

「な、何者だこいつは!」 「だから、ただの通りすがりだっての」 「くそ、狂気の炎、脅威の焔、それは狂い、狂いの破壊、連鎖する爆、侵食する熱、慈悲はなし慈悲はなし、我が目に映るは狂爆、破壊の狂爆――」 「キャンセル!」  ローブを来た魔法系のジョブっぽい奴らが次々と詠唱を唱え始めたけど、俺はそれを全てキャンセルし魔法を中断させた。  連中は驚き慌てふためいているが、その隙にセイラとエリンが乗ったフェンリィ、そしてニャムが森に火を放っている連中を片付けていく。  俺たちは二手に分かれて行動していた。先に偵察に向かい敵の情報を知っているフェンリィとセイラの組、そしてファルをつれているエメラルドの組とにわかれた形である。   問題はメンバーの振り分けだったが、これは色々とあったがなんとかこの組み合わせに決まった。というよりこの組合せ以外ありえなかった。  何故ならカラーナの側からはアイリーンが離れるようなことはなく、エメラルドの側をクローバーが離れることもないからだ。  そのためカラーナは俺と一緒になりたそうだったが、それをやってしまうとセイラにつくにしろエメラルドにつくにしろ人数のバランスが悪くなる。  だから凄く渋ってはいたけど、カラーナとアイリーンにはエメラルド、クローバー、マイリスの側についてもらおうという組み合わせで納得してもらった。  さてと、セイラとニャーコはそれぞれ魔法と忍法で燃え移った火の鎮火をしてくれている。  エリンもフェンリィの上から精霊の力で後処理を担当してくれていた。  その間に俺は倒れていたノマデスの男に近づきマジックバッグから取り出したポーションを飲ませてあげた。メリッサが作ってくれたポーションで結構な量を持参してきている。  彼の怪我はかなりのものだったが、さすがメリッサが作ってくれたポーションだ。飲むことで徐々に傷が塞がり顔色も良くなっていった。 「どなたか存じ上げぬがありがとう。おかげで助かった」  元気を取り戻した彼がお礼を述べた。血色が良くなり喋るのも問題なくなったころには火は消し止められていて、ニャーコとセイラも様子を見に戻ってきてくれた。 「にゃん、大したことなさそうで良かったにゃん」 「ガウガウ」 「お、おおお! まさかこの狼は、フェンリルの子では?」  フェンリィも彼が無事なのを安堵するように鳴いてみせたが、その途端に彼の目の色が変わった。かなりの興奮ぶりだな。 「……そう。私のパートナー、フェンリィ」 「私はエリンなの!」 「なんと、これはまた可愛らしいエルフにフェンリルの子が人に懐くとは……一体あなた方は何者なのですか?」  エメラルドやクローバーも随分と驚いていたけど、ノマデスの民からするとそれだけエルフやフェンリルという存在が特別ということなのだろうな。 「俺達はブルーの使いとしてやってきたんだ。途中でエメラルドやクローバーとも遭遇し、目的と重なる部分も大きいから一緒に森に来た」  そう伝えると彼の目の輝きが変わり、立ち上がり前のめりになって言葉を返してきた。 「なんと! あのブルー殿の! しかも妹君とクローバーが! で、ではマイリスは?」 「にゃん、盗賊からは助け出したにゃん」 「……問題ない無事。逞しい子だった」  彼の問いかけにはニャーコとセイラが答えた。ノマデスの彼がホッと胸をなでおろす。 「それでは妹君は?」 「今は別行動だ。この森を燃やそうとしている連中がいると知ったからな。なんとかするためにそれぞれ動いている」 「左様でしたか――ですが、それは助かります! 奴らはまだまだやってきているのです。恐らく我らが隠れ潜んでいた森の奥の集落まで行こうとしているかもしれません」  心配そうに彼が口にする。なるほど集落か……。 「あぁ、なら急ぐとしよう。動けるか?」 「もう大丈夫ですし、森の為なら私も戦います」  そして彼が立ち上がる。どうやら弓使いのようで、かなり長い弓と矢筒を背負っている。 「こっちには弓使いがいなかったから助かるけど、そういえば貴方はお一人ですか?」 「他にも仲間がいましたが、長に伝えるために戻ってもらいました。あ、それと申し遅れましたが私はスピニッチ。ジョブはティラトーレです」  胸に手を当て名前を教えてくれた。とにかく、そのノマデスが隠れているという集落までは急いだほうが良さそうだ。しかしティラトーレか。弓系のジョブなんだろうけど俺の知らないものだな。  そして俺たちもそれぞれ名前をスピニッチに教え、そのままフェンリィの後をついていくが、途中でまた森を焼いている連中に遭遇したので排除した。  しかし、こいつら全員冒険者なんだろうか? いや、これまでのことを考えれば当然そうなんだろうな。俺自身も冒険者ではあるが、こんな下手な盗賊よりたちが悪い連中と同業と思われたくはないな―― ◇◆◇ sideカラーナ  うちらは二手にわかれて行動することになった。人数調整のこともあって、うちはボスとは一旦離れ離れになってもうた。正直ショックやけど、森に入ってみたらそないなこと気にしている場合じゃなかったわ。  もうおるわおるわ。森を焼いている連中がごっつぅおるねん。全くかなわんな。綺麗な森やのに、こいつらこんな酷い真似して何も思わんのかいな。 「とんでもない奴らや! アイリーンとっととやるで!」 「はい、姐御!」 「私達も急がないと」 「勿論だエメラルド」 「わ、私は……」  エメラルドとクローバーも戦う様子を見せたんやけど、マイリスも黙ってみているのは嫌だって雰囲気を醸し出しとるな。でも、ここでは大人しくしておいてもらわんとあかん。 「あんたは戦えないやろ? 無理せんとき!」 「そ、そんな、私だってジョブはあるわ!」  うん? そうやったのか。てっきり戦えないかと思ったやん。 「何のジョブやのん?」 「の、ノービス……」 「それは、戦えないと一緒じゃん」 「うぅ……」  ノービスか……アイリーンの言う通りやな。ノービスはステータスが全て平均的な状態から始まるけど、スキルとかないんや。 「マイリスはここでは無理はしないで」 「そうだ、大体お前を助けに行ったのに、ここで何かあったら意味がないのだからな」    エメラルドは優しく、クローバーは少しキツめやな。マイリスは自分の不甲斐なさを気にしているのか顔を伏せているなぁ。 「アイリーンは遠距離から援護やな。マイリスから離れずに頼むで」 「姐御の頼みなら!」  そしてうちらは森を燃やしている連中に攻撃を仕掛けた。魔法系も多かったけど、火矢を使ってるのもおった。その連中を次々と排除していく。 「くそ、なんだこいつら!」 「突然出てきて、しかも強い!」  ファルが空中から連中を切り刻み、エメラルドも弓で無力化していっとる。  うちもナイフやコインで倒していく。アイリーンの矢も的確やし、クローバーの魔法で縛り付けられ寝っ転がされていったのもおる。しかしこいつら本当に殺さないんやな。  ちなみに燃え移った火はクローバーの魔法で消えていった。アイリーンの魔法の矢も役立っとるようや。  さて、このまま先に進んでさっさとボスに会いたいとこなんやけど。 「全く随分と仲間たちをやってくれたようだね」  うちらの前に一人の女が立ちふさがったんや。赤いローブにウェーブの掛かった赤毛。手持ちの杖も赤と赤一色の女やった。 「私はカージ。芸術的火魔法の使い手よ。ふふ、あなた方も美しく消し炭にしてあげるわ」  ……何やこいつ?
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