第49話 火火火火

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第49話 火火火火

 どうやらカラーナ達と上手く合流できたようだ。向こうにはノマデスの民もいて消火活動に明け暮れている。  それはいいとして、妙な奴がカラーナと戦っていた。ヒヒヒヒうるさい奴でしかも事もあろうにカラーナに向けてゲスな言葉を浴びせていた。目付きも嫌らしいとても耐えられるもんじゃない。 「長! 無事でしたか!」 「スピニッチか……あぁ私は大丈夫だ」  スピニッチが声を掛けた相手――あれがノマデスの族長か。エメラルドの兄なんだよな。上背が高くてわりとがっちりした体型の男だった。緑色の髪の毛が肩まで伸びていて、自然と調和した緑のローブと木製の杖を手にしている。  族長と言うだけあってか顔つきは精悍なものだ。雰囲気も地に根を張ったようにどっしりとしている。 「ヒヒヒヒヒッ! 随分と舐めた真似をしてくれるじゃねぇか!」  ヒヒヒヒうるさい男が俺に向かって火球を連射してきた。こいつも火を扱うのか。本当に全力で森を焼きに来ているんだな。 「キャンセル! キャンセル! キャンセル!」  とりあえず目につくところからキャンセルする。範囲キャンセルの方が楽だが、範囲キャンセルは一度使うと暫く使えないからもったいない。  この程度ならキャンセルを絡めて影響が少ないのは無視した方がいいだろう。森がこれ以上焼けない程度には消す必要があるが。 「ヒヒヒ、やるじゃねぇか。だが俺の炎はまだまだ終わりじゃねぇぜ」 「あんた、うちらのことわすれてるんちゃう!」  コインが男に向けて連続発射された。ジェントルシーフのスキルか。無数のコインが男に迫る。  だが、炎が壁のように変化しコインが全て溶解してしまった。こいつ、ギリギリまで引きつけて炎を壁にしたか。俺のキャンセルを意識してるな。 「俺の火とコインは相性が最悪だぜ。ヒヒヒ」 「チッ!」 「姐御! ここはあたいに任せて下さい! ホーカ! 覚悟するんだね! フリーズアロー!」    アイリーンがちらりと俺を見たのがわかった。さっきと同じ用にキャンセルで相手の防御を中断させ当てろということか。 「――ヒヒヒ、火影!」  しかし、ホーカが行使したのは影から炎に包まれた分身が生まれるというスキルだった。  氷の矢を分身が盾になって受けてしまう。更に何体かはアイリーンに襲い掛かっていった。  また面倒なものを。どうする全部キャンセルするか?  考えていると、ホーカが指をパチンッと鳴らし、かと思えば炎の狼が数体出現し俺に飛びかかってきた。 「キャンセル! キャンセル!」  とにかくキャンセルでスキルを一つ一つ消していく。しかし、ホーカはどんだけ炎を生み出しても疲れる様子すら見せない。 「くっ、どんだけ矢を撃っても燃やされてしまうか」  スピニッチの声が聞こえた。あいつの際限なくばら撒かれる炎は結構厄介だな。 「ホークブーメラン!」  ガンダルの声が響く。投げつけられた斧がホーカの背中を狙い撃ちにした。 「チッ!」    ホーカが飛んでその斧を避ける。そうか、流石に背中にまで目はない。奴が炎を操れるのは見えてる範囲だ。 「よくやったぞガンダル!」 「へっ、褒められても何も出ないぜ」  戻ってきた斧をキャッチしてガンダルがひねくれた事を言ったが、今のでこいつに隙が出来たのも確かだ。 「ジャイロスライサー!」  斧を避けたホーカに向けて双剣を構えてスキル発動。螺旋回転を加えながら目標に向けて突撃する。 「ぐわぁああぁあぁああああ!」  全身を膾切りにされたホーカが真上に吹き飛んでいった。今のはかなりのダメージに繋がったことだろう。 「ゲハッ!」  地面に落下し呻き声を上げる。恐らくこいつさえ倒せば、今森に来ている連中の主要なメンバーは全て倒せたことになるはずだ。 「な、舐めんじゃねぇ! パイロマニア!」  しかし、ホーカが叫ぶと同時に火柱が発生した。とんでもない熱量に、思わず腕で顔を覆ってしまう。 「「「「「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ! まさか奥の手を使うことになるとはなぁあああ!」」」」」  すると炎に包まれた状態のホーカが五人姿を見せた。頭の上でもメラメラと炎が燃え盛っている。    それぞれ距離も離れている。全員が炎に包まれているから見分けもつかない。  スキルキャンセルしようにもどれが本物かわからなければ無駄打ちになる可能性が高いか――  ここにきて連続でスキルを使用していたから精神的にも疲労が溜まっている。あまり無駄撃ち出来ないか。 「「「「「この状態になった俺は無敵だ! ヒヒヒヒ! 森もテメェらも全て業火で焼き尽くしてやるぜ!」」」」」  五人のホーカが一斉に叫び動き出した。全く腹の立つ放火野郎だな――
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