第51話 ノマデスの族長と話す

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第51話 ノマデスの族長と話す

 森に火をつけて回っていた冒険者を倒した。まだ息のある連中は縛って纏めておき、俺達は協力して山火事の鎮火にあたった。 「――この度は森の危機を救って頂きありがとうございます」  族長のグリーンからお礼を言われた。この人がエメラルドのお兄さんか。あのカージ相手に見せていた魔法は凄かったな。一体どんなジョブなのかちょっと気になる。 「話をききましたがマイリスも救って頂いたと。それについても感謝しております」 「あぁ、いや。まぁそれは確かに助けたんだが……」  マイリスについても礼を言われたが、捕まえた盗賊と結局今は行動を共にしているからな。何と言っていいのやら。 「ふん。そのあまちゃんは妙に気を遣ってるみたいだが、その嬢ちゃんを捕まえたのは俺らだ。金になると思ってな」  ガンダルが鼻息を吹かしながら言い放つ。気を遣っていたつもりはなかったんだけどな。ただ何と言っていいか迷っていただけで。 「ふむ……」 「族長。言っていることはとんでもないですが結果的に彼らのおかげで助かりました」  ガンダル達に目を向けて軽く唸るグリーンだったが、途中で助けたスピニッチが意外にも盗賊たちを擁護していた。 「お兄様。私の印象では彼らは根っからの悪人というわけではないと思います」 「俺はちょっとそれは甘いとは思うけどな。油断出来ない連中なのは確かだ」  エメラルドはガンダル達にそこまで悪い印象は持ってないか。しかしクローバはエメラルドとは考えが逆なようだ。 「ま、うちもクローバの話に同意やな。うちも人に誇れる生き方しとたんかったから。それだけに完全に信用するのはあかんと思うし」 「あたいも姐御に同意見だよ。こいつらだって善意でやってるとは思ってないだろうし」  カラーナとアイリーンはクローバ寄り名考えか。二人共盗賊稼業を続けていたからこそ油断ならないと経過しているんだろう。 「当然だ。俺らはとりあえずあの連中がいけすかねぇと思っただけだ。今は敵の敵は味方って意味で一時的にこっちについてやろうと思ったまでよ」 「……素直に認めた」 「クゥ~ン」  セイラがフェンリィの頭を撫でながら盗賊達を見た。ガンダルは耳をほじくってるけどな。 「族長。やっぱりこいつら捕まえた方がいいかもしれませんよ」 「感情で物を言うものではないぞクローバ。スコピッチの言う通り彼らに助けられたのも事実。それに今敵対心がないのであれば私から言うことは特にはない」  グリーンがそう返すと、クローバはどこかばつがわるそうに頬を掻いた。    そしてグリーンの目が今度はマイリスに向けられる。彼女も戸惑いが見られるな。まだ一言も発してないし。 「……その、勝手に森を出ようとしたことは謝るわ。ごめんなさい」 「――そうか。反省しているのであればもう何も言うまい」  マイリスが謝罪し頭を下げた。グリーンは軽く瞼を閉じた後頷き、話を締めようとした。 「だけど。私の考えが間違っているとは思ってないわ。だってそうやって戦いもせず静観してきた結果がこれじゃない!」  だが、彼女は納得のいかないこともあるようだ。マイリスの語気が強まる。どこかムキになってるようでもあるな。父親の仇が町に居座ってるんだったか。  にもかかわらず何も出来ないのがやはり歯がゆいのか。しかもその結果森が焼かれる事態に陥っている。  それにしてもあいつら森を焼くのがそもそもの目的だったのか? だとしたら一体何のために? そもそもの話では町の冒険者はここの御神木が目的だと聞いたが燃やしてしまったら意味がないのでは?  マイリスはそっぽを向いてしまいグリーンは何と答えてよいか逡巡しているようだな。聞くなら今か。 「族長。横からすみません」 「……いや、構わない。君たちには随分と世話になったしな」  すっと固くなった表情を緩めグリーンが俺に体を向け直した。話が変わってむしろ丁度良かったと考えていそうでもある。 「実は俺たちはノマデスの民である皆さんにお願いがあって来ました。道中二人には話したのですが、ブルーという吟遊詩人はご存知で?」 「ブルー――そうか君たちはブルーの知り合いなのか」  ブルーの名前にグリーンが反応を示す。 「あたいは暫く一緒に行動してたしね」 「うちらも途中で出会って今は互いに協力しあってるんや」 「にゃん。スケベな男だけどにゃん。意外としっかりしているところもあるにゃん」  その後女性陣がブルーについて語ったがニャーコの印象よ……  そして俺たちが話していると、集まってきていたノマデスの民がささやき始めた。 「あのブルー様の……」 「確かにおっぱいがお好きなようでしたね」 「基本的にはよい方でしたがお胸に関してだけちょっと怖かったわね……」  うん。噂してるのは基本女性だった。本当何やってるんだあいつは。  とにかく俺は今一度、エメラルドとクローバに話したことをグリーンに聞かせて答えを待った。 「なるほど。話はわかった。だが済まない。我らは今森を出るわけにはいかない。それに――争いは好まぬのだ」  やはりその答えは一緒か。だが問題はここからだ。 「町の冒険者が御神木を狙っていると聞いていたのですが――」 「ふむ。口調が少々堅苦しく感じるな。よければ普通に話してくれて構わないのだが」  あぁ、形式張ってるのがわかったか。でもそれなら俺もそっちの方が楽だし。 「ならお言葉に甘えて。奴らこの森の御神木が狙いと聞いていたのだが、実際は森ごと燃やしに来ていた。そこで気になったのだが、その御神木というのは一体何なのだろうか?」  率直に問うと、グリーンは顎に手を当て、ふむ、と口にし。 「それならば見てもらった方が早いかもしれないな」 「え? いいのか?」 「森を助けてもらった客人であれば断る理由もない。さぁこちらへ」  こうして俺たちは御神木とやらを見せてもらえることになった。さてあの連中が狙う木っていうのは一体いかほどのものなのか――
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