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今から50年以上前のこと、まだ蒸し暑さが残る秋の夕暮れ。柴川と小崎の2人は、宝刀山の山中で日が暮れるまで探検ごっごなどをして遊んでいた。ふと暗くなった夜空を見上げると、飛行機の翼に灯る白いライトのような物体が、右に左に不規則に動いている。柴川が不思議に思って見ていると、初めは点でしかなかったライトが、段々大きくなって、宝刀山の山頂に近付いて来た。「秀ちゃん、UFOが飛んで来る!一緒に見に行こう!」柴川は小崎を誘うと、UFOを見に山頂へと向かった。
2人が山頂に到着した時には、木立が途切れてぽっかりと開けた場所に、眩い光が照らされていた。逆光で分かりづらいが、光の中には複数の人影のようなものが動いているのが見える。柴川と小崎は、その正体を確かめようと木立の陰からじっと様子を観察していたが、人影は辺りを警戒するように見回した後、何かを発見したかのように、2人の隠れている方向へズンズンと歩き始めた。
柴川は、恐怖のあまり足がすくんで動けない。小崎は、一目散に逃げ出そうとする。「あっ。」小崎が短く声を上げる。声に反応して、柴川はパッと後ろを振り返る。そこには、頭から血を流して横たわっている小崎の姿があった。小崎は走ろうとした瞬間、足がもつれて転倒し、地面の石に頭を強打したのだ。気付けば、人影は2人のすぐ目の前まで迫っていた。柴川はどうしていいか分からず、ただ泣き叫ぶしかなかった。
「正直、もうだめだと思ったよ。秀ちゃんは死んだと思ったし、僕も宇宙人に殺されるんだってね。」
「ところが、彼らは君を殺すどころか、私の命まで助けてくれた。そうなんだな?」
私がそう言うと、柴川は無言で頷いた。つまりは、こういうことだ。宇宙人と思われる人影は、血を流して倒れている私を見つけると、UFOへと運び込んで彼らの惑星へと連れて帰った。さらに、病院のような施設に私を搬送すると、手術治療を施して私の命を救った。
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